今回は、粉塵を極力排除し清浄度を管理している『クリーンルーム』内で使用する『クリーンペーパー(無塵紙)』についてお話しします。
長年当社(桜井株式会社)ブランドのクリーンペーパー『スタクリン』をご愛顧いただいているお客様からすると「何を今更?」と思われるかもしれませんが、初めてクリーンぺーパーを検討することになった、長年利用しているがクリーンぺーパーについて深く考えたことがなかった、という方は是非最後までお読みいただければ幸いです。
尚、楽器を清掃するクリーニングシートにも『クリーンペーパー』と呼ぶものがあるようです。残念ながらそちらの『クリーンペーパー』をお探しの方は今回関係ない話となりますが、せっかくですのでお時間あれば知見を増やす為にもおつきあいください。
<目次>
1. クリーンペーパーが使われている業界
当社(桜井株式会社)で“スタクリン”というブランドのクリーンペーパーを販売開始して約40年経ちます。
発売当時、国内の半導体産業は成長期で、国内半導体メーカー及びその周辺装置や部品メーカーがクリーンルームを有した製造工場を日本全国に設置していました。
※クリーンルームとは、下の画像のような、発塵を抑えるクリーンスーツや手袋をして、極力粉塵を出さずに清浄度を管理し作業する環境を指します。
現在クリーンペーパーの市場は、工業用(半導体、電子部品)のクリーンルームがメインとなりますが、製薬関連やバイオ関連のクリーンルームでも使用されています。
2.クリーンペーパー(無塵紙)とは?MADE IN JAPANのクリーンペーパー誕生
米粒よりも小さい半導体チップを製造するクリーンルーム内では、目に見えないレベルの『塵』をいかに少なくし管理するかが、歩留まりを良くし、製品の信頼性を上げることにつながります。
半導体産業成長期の1980年代には、クリーンルーム内で使用する紙から発生してしまう「紙塵、浮遊塵」をなんとかしたいというニーズが高まりました。
まず普通紙(一般紙、コピー用紙)では紙紛が発生するため、フィルム系の基材を用いた合成紙が使われるようになりました。
多くは主にポリプロピレン(PP)基材の製品でしたが、このポリプロピレン基材には白色性を出すための“顔料”と呼ばれる白い粉が練り込まれており、ツルツルとした見た目ではあるものの、発塵性は低くありませんでした。
何より、ノートやメモの筆記用としては問題ありませんでしたが、当時メインとなるコピー用には、基材自体が熱に弱い為対応出来ませんでした。また、オフセット印刷時においても静電気が発生し、作業性が良いとは言えなかったようです。
コーティング等で静電対策され耐熱性の高いポリエステルフィルム(PET)であればそれらの問題をクリアー出来たかも知れませんが、当時は紙を大量に使用していたのでコストを度外視とはいきませんでした。そこでやはり紙ベースが良いとなり、発塵しない紙は無いのか?造れないのか?と当社(桜井株式会社)に相談が入りました。
製紙メーカーと取引のある当社は、試行錯誤を繰り返しながらアクリル系樹脂を含侵させた紙ベースのクリーンペーパー『スタクリン』をゼロから開発し、販売を開始し現在に至ります。
※普通紙と合成紙とスタクリンについての解説は下記の関連記事をご参照ください。
3.クリーンペーパー色の話
クリーンペーパー『スタクリン』の開発当初はお客様からの色の指定はなく、白色で進んでいました。試作品のサンプル提出が進んでいく中で、普通紙と区別する為に「白以外がいいのでは?」という声があがり、現在『スタクリン』のベース色となっている淡いブルーが選ばれました。
何故ブルーに決まったかは残念ながら正式な記録が残っていません(社内の噂話はありますが…)。ピンクやイエローはやや派手となり、グリーンかブルーかの二択だったのかなと推測しますが、当社(桜井株式会社)のコーポレートカラーがブルーなのでそこから決まったのかも知れません。
日本国内と東南アジア圏では販売開始から徐々にスタクリンが採用され、後に他社様からもクリーンペーパーが販売されはじめましたが、当社のスタクリンのブルー色が既に『クリーンペーパー=ブルー』のイメージとなっていたため、現在もほとんどのクリーンペーパーがブルーをメインとしています。
当社の『スタクリン』は、色分けをしたいというご要望にもお応えして、コピー用は7色(ブルー、ピンク、イエロー、ホワイト、グリーン、オレンジ、バイオレット)ご用意しています。
4.クリーンペーパーサイズの話
当社(桜井株式会社)で一番販売されているクリーンペーパーのサイズは間違いなくA4サイズです。これはコピー用からスタートし、現在はプリンター出力(レーザー、インクジェット)でもA4が多いからです。
かねてからB列(B5、B4)サイズもご用意していましたが、1990年代に行政文書はA列(A4、A3)に出来るだけ統一していくという指針が示され、民間企業も準ずるという流れとなりました。
国際的にはA4サイズが多く採用されていますが、アメリカではレターサイズという規格が採用されています。
手元にデータはありませんが、現在でもアメリカ国内ではレターサイズの採用比率が高いようです。サイズは横8.5インチ×縦11インチでミリに換算すると横216mm×縦279mmとなり、A4よりやや横幅があり縦が短くなっています。
「レターサイズのクリーンペーパーありますか?」とたまに問合せを受けます。
レターサイズのクリーンペーパーの在庫はしておりませんが、当社ではご希望サイズにカットする別注対応も行っておりますので、是非ご相談ください。
5.まとめ
クリーンペーパー『スタクリン』の誕生秘話を含めたお話はいかがだったでしょうか?
クリーンペーパーでは『A4 ブルー』が何故一番多く採用されているのかという理由をご理解いただけたかと思います。今後もこのコラムコーナーを通じてクリーンペーパーの歴史や用途・製品をご紹介出来ればと思います。最後までおつきあいいただき有難うござました。
執筆者紹介
高谷 陽介 (Takatani Yousuke)
1992年桜井株式会社に入社。社歴約30年のうち20年以上クリーンペーパーに携わり、現在はマーケティンググループに所属。『ミスタークリーンペーパー』と呼ばれていた(実際には誰も呼んでいない)頃の経験を活かして今回筆を握る。個人的には最近気に入っていたドラマ『団地のふたり』が終了し“ロス”に浸っている。