クリーンペーパーの『選び方』を詳しく解説
- sakurai
- 4月24日
- 読了時間: 13分
更新日:4月30日

社内webデザイナーHさんから推奨(半強制・・)されたクリーンペーパー(無塵紙)の基本編三部作コラムも、早いもので今回が最後となります。今回も『クリーンペーパー初心者』の方に向けて、クリーンペーパー『スタクリン』を30年以上提供している当社(桜井株式会社)から、お役に立つ情報をお伝え出来れば幸いです。
当社へのクリーンペーパーのお問い合わせで多いのが『ウチは電子部品を製造しておりクリーンルームも設置していますが、今までクリーンペーパーは使用していませんでした。先日取引先からクリーンペーパーを使用するよう指導を受けました。』というパターンです。
続いて『書類、紙製品はいくつかクリーンルームに持ち込んでいますが、どこからどこまで手をつけて、どんな製品を選べば良いか教えてほしい。』という感じです。この典型的ともいえるケースを例に、過去好評か不評かはともかく、今回も当社(桜井株式会社)ならではの裏話も含めご説明していきます。今回はシリーズ最終回とあり、過去2回よりやや長めとなりますが、最後までお付き合いください。
<目次>
1-1. クリーンペーパー(無塵紙)とは
1-2. スタクリンとは
2-1. クリーンペーパー プリンター用(A4サイズ品)
2-2. クリーン(スタクリン)ノート(クリーンルーム用ノート)
2-3. 基本アイテム(プリンター用、ノート)の販売ロットについて
3-1. 『EXクリーン』とは、その語源は
3-2. スタクリン、EXクリーンの選び方
7-1. クリーンペーパーに求められる品質
7-2. クリーンペーパーの発塵度とは
8-1. お問い合わせ方法、打合せスタイル
8-2. クリーンペーパーへの思い、営業ネットワーク
1.クリーンペーパーとは、スタクリンとは(前回までのおさらい)

1-1.クリーンペーパー(無塵紙)とは
今回も少しだけおさらいから。クリーンペーパーとスタクリンについては、もう知っているという方は『2.』以降へお進み下さい。
当社(桜井株式会社)がいう“クリーンペーパー”とは電子部品製造環境、あるいは製薬・バイオ関連のクリーンルーム(防塵着を着て、粉塵を出来るだけ除去した環境)内で使用する特殊紙となります。楽器を磨く特殊紙にも『クリーンペーパー』と呼ばれるものがあるそうですが、そちらとは別物となります。簡単にいうとゴミ、粉塵が出にくい加工が施してある『紙』となり、『無塵紙』とも呼ばれます。
1-2.スタクリンとは
当社(桜井株式会社)ブランドのクリーンペーパーで『スタクリン』という製品があり、発売から30年以上クリーンルーム関連業界からご支持を頂き使用されています。世の中にクリーンペーパーというカテゴリーがあるかないかという時期(1982年頃)にスタクリンは開発・発売され、『スタクリン紙(し)』とか、『スタクリンぺーパー』、『スタークリーン』と呼ばれていた時期もあります。
2.基本アイテム(プリンター用紙、ノート)
2-1.クリーンペーパー プリンター用(A4サイズ品)
では本題のクリーンぺーパーの選び方についてご説明していきます。
まず一番用途が多いのが定番ともいえるA4サイズのプリンター用紙(コピー用紙)です。こちらはクリーンルーム内でメモ用やプリンター出力用であったり、工程管理表やマニュアルとして使用されています。この用途ではA4サイズでブルー色の『ニュースタクリンRC.PPC SC75RBA4』をおススメします。理由は下記をご覧ください。
2-2.クリーン(スタクリン) ノート(クリーンルーム用ノート)
続いて用途が多いのがノートです。クリーン(スタクリン)ノートは製造現場内だけでなく、専門研究施設や大学関連の施設でもご利用頂いています。下記が当社(桜井株式会社)のラインアップとなります。
仕様:A4サイズ横罫タイプ →品名:ニュースタクリンRCノート 品番SNA412R 販売単位10冊/ケース
仕様:A4サイズ5mm方眼タイプ →品名:ニュースタクリンRCノート 品番SNA45BR 販売単位10冊/ケース
仕様:B5サイズ横罫タイプ →品名:ニュースタクリンRCノート 品番:SNB512R 販売単位10冊/ケース
仕様:B5サイズ5mm方眼タイプ →品名:ニュースタクリンRCノート 品番:SNB55BR 販売単位10冊/ケース
※各32枚綴り(64ページ)
2-3.基本アイテム(プリンター用、ノート)の販売ロットについて
これもよくあるお問い合わせなのですが、『弊社にはクリーンルーム環境はないが、お客様のクリーンルームに入る際に必要になり、持参するよう指示があった。必要なのは今回のみになりそうで10枚もあれば十分なんですが、小分け販売しているところはないでしょうか?』というご相談です。A4サイズのプリンター用紙の定番はケース単位(250枚×10冊/ケース)の販売ですが、1冊単位でもご用意があります(下記)。

品番:SC75RBA4SS
入数/販売単位 250枚/冊
スタクリンノートは全て10冊/ケース単位の販売となります。絶対に無いとは言い切れませんが、当社(桜井株式会社)の取引先でもケースをばらして1冊単位で販売しているところは残念ながらありません。
私(筆者)は企業に属すサラリーマンとして当社製品の販売を推進すべき立場なのですが、『数枚しか必要ないんですが・・』というお客様には『決して安くはない製品なので、お伺いする取引先の方に支給をお願いしてみてはいかがでしょうか?』と御提案する時もあります(サンプルはいつも目の前にあり、数枚ならこっそり無料で差し上げたいのはやまやまなのですが・・)。
3.スタクリンとEXクリーンの違い
3-1.『EXクリーン』とは、その語源は
当社(桜井株式会社)のカタログや公式ECサイト(桜井ダイレクトショップ)を見て頂くと、スタクリンともうひとつクリーンペーパーのブランドで『EXクリーン』という製品があり、位置付けとしてはスタクリンの安価版となります。海外ユーザー様を中心とした、スタクリンほどの品質は必要ない(後工程/組立がメイン)というニーズに合わせた製品設計で、EX=『Export(輸出)』が製品名の語源です(当時の製品企画担当者は、かなり前に定年退職されており、担当から担当へ語り継がれている語源という点はご了承下さい。)。
3-2.スタクリン、EXクリーンの選び方
初めてクリーンペーパーを導入なさるお客様から、「“スタクリン”と“EXクリーン”、どちらを使えば良いか」とよくご相談をいただきます。製造方法や原材料は全く別物となり、用途と使用エリアについて明確な規定や定義があるわけではないのですが、クリーンぺーパーに携わってわずか30年の私(筆者)は以下のように説明させていただいています。
『工業用クリーンルームの規格 クラス1、10、100、1000、1万、10万、という観点で言うと、クラス1はほぼ『人』は入れないとして、クラス10~100レベルの高い洗浄度設備のユーザー様はスタクリンを選択し、クラス1万、10万の環境の方はEXクリーンを選択されるケースが比較的多いです。』
また、クラス1000の方は、自社基準をお持ちでない場合は品質が上となるスタクリンを選択しておいたほうが無難、とご説明しています。もちろんクラス1万、10万のお客様でも清浄度管理と品質にこだわりスタクリンを選択されているユーザー様もかなり多いです。
尚、両製品とも使用後は古紙回収(リサイクル用途)に出して頂くことが可能です(場合により回収業社様へご確認下さい。)。
4.合紙(スペーサー)、包装紙、工程紙としての用途
ここまではプリンター用紙やノート等のいわゆる文具としてのクリーンペーパーの用途でしたが、クリーンペーパーは製品(電子部品、仕掛品)を搬送したり、保護する用途で使用されるケースも多くあります。
わかりやすい例でいうと、「クリーンルーム工程内で製品への傷防止の目的に、折り紙サイズの普通紙を製品の下敷きとして使用していたが、その普通紙がクリーンルーム内汚染(異物発生)の原因のひとつと判明した為、クリーンペーパーへ置き換えをしたい。」として採用されるものです。出荷時に製品と一緒に出荷されるケースもあれば、自社工程内で工程用紙として使用するケースもあり、サイズや形状もカット判(シ-ト状、大判)であったり、ロール状(幅広、小巻)であったりと様々です。
当社(桜井株式会社)では、多数の品種・厚み・カラー・サイズを取り揃え、該当サイズが無い場合はご希望のサイズに加工してご提供することも出来ますので是非ご相談ください。
5.クリーンペーパーの品揃えについて
クリーンペーパーの事務用品用途に続き合紙(スペーサー)、工程紙用途についてご説明してきましたが、これらは普通紙からの置き換えに比較的すぐ着手される部分となります。
現実的な話をすると、クリーンペーパーの導入はコストUPとなり、取引先に指摘され渋々クリーンペーパーを導入せざるを得ない状況で『とりあえず体裁を整える程度で良い』というユーザー様も中にはいらっしゃいます。
一方で、やるからには全面的にクリーンペーパーに切替を行い、クリーン度と生産歩留まりの向上を目指し、『取引先と業界での信頼を得たい』というユーザー様も多くいらっしゃいます。
当社(桜井株式会社)ではこれまでにご紹介した製品以外にありとあらゆるクリーンペーパー基材の製品を品揃えしております。例を上げるとクリーンペーパーの感熱紙(サーマル用紙)、付箋(糊付きメモ)、ファイル(書類保管用)、等々です。残念ながら過去にユーザーニーズから製品化したものの販売数が一定数に届かなかった製品や、感圧紙(複写帳票用ノンカーボン紙)のように時代の流れにより不要となった製品もいくつかあります。
あくまで当社(桜井株式会社)調べですが、おそらく日本国内、いや世界中で当社より品揃えが多いメーカー様はないと思われます。当社営業員は『別注対応』という言葉を使いますが、『無いものは造れば良い』の精神が当社にはあり『企画開発型商社』を社名に冠していますので、是非『こんな製品はないだろうか?造れないだろうか?』というお問い合わせをお待ちしています。
6.忘れがちなラベル(シール)用途
クリーンペーパーの用途・製品紹介としては最後になりますが、もう一つクリーンペーパーに関連してご紹介したい製品があります。それはクリーンルーム用のラベル・シールです。
電子部品や医薬品などは、製造工程のある段階からクリーンルームから離れ、一般環境での取り扱いとなると、段ボールや専用ケースで出荷されますので、その場合の表示ラベルは当然通常のラベルです。しかし、製品・部品・原材料・生産工程によっては、クリーンルームからクリーンルームへと出荷・輸送されるケースがあります。代表的な例としては、半導体を製造するにはかかせないシリコンウエハーの製造時、輸送時に使用される場合です。シリコンウエハーを製造する側(ウエハーメーカー)も、購入して受け取る側(半導体メーカー)もクリーンルームとなり、取り間違いを防ぐ意味でケースには表示が必須の為、IT化が進んだ現在でもこの用途のラベルは使用され続けています。
当社(桜井株式会社)では、クリーンペーパーを製品化した数年後には、各ユーザー様からのご要望に応えクリーンペーパーを基材としたクリーンルーム用ラベルを発売し、20年以上の実績があります。クリーンペーパーと同じくらい『クリーンルームではクリーンルーム用のラベル・シールを使う』というのはクリーンルームを設備する業界の常識になっている、と言っても言い過ぎではないでしょう。
7.クリーンペーパーの品質基準、発塵度(クリーン度)について

7-1.クリーンペーパーに求められる品質
説明が前後するかもしれませが、今回のコラムタイトルであるクリーンペーパーの『選び方』に興味を持たれ、知りたいのはクリーンペーパーの『品揃え』でなく、『選定方法』、『判断基準』だ、という方向けにクリーンペーパーの品質基準をご説明します。
クリーンペーパーに求められる一番大事な品質は『発塵しないこと』です。近年クリーンペーパーは当社ECサイト(桜井ダイレクトショップ)はもちろん、大手通販サイトやオフィス用品カタログにも掲載され、一般の文具と同様に手軽に入手することが出来るようになりました。その手軽さゆえに『クリーンルーム用のクリーンペーパーとして売られているのだから、深くは考えずどのメーカーでも良い』というお客様もいらっしゃるかもしれませんが、『発塵しないこと』、実際には『発塵を出来るだけ抑えること』がクリーンペーパーを選ぶ基準の大前提となります。
7-2.クリーンペーパーの発塵度とは
『発塵しないこと』を数値で表すには、『発塵度』や『クリーン度』、『パーティクル測定値』、『パーティクル発生量』という言葉を用います。クリーンペーパーより認知度が高いのはワイパー(クリーンルーム用のウエス、不織布)のパーティクル測定ですが、クリーンペーパーの発塵度測定方法に関してはJIS規格や世界統一基準なるものがなく、当社(桜井株式会社)では、SEMI規格(半導体製造業界で使用される規格のひとつ)G67-0996に準じた測定方法と自社独自の測定方法の二つを採用しています。
測定対象とする『塵』の大きさ(0.3μm,1μm、等)をどう設定するか、浮遊塵(空中に舞う塵)を対象とするか、落下塵(発生すると真下に落下する塵)を対象にするかなどは、ユーザー様により対象や考え方が異なり、お客様自身で評価方法を設定しているユーザー様も多くいらっしゃいます。
私(筆者)が営業職の時に『現在他社のクリーンペーパーを採用しており、貴社のスタクリンと比較評価したい』という、とある電子部品メーカーの購買部門の方を訪問した時の話ですが、
「では、サンプルお預かりし評価してご連絡させて頂きます」と言われ、帰り際に「ちなみにどの部署のご担当者様が評価されるのでしょうか?」と聞いてみたところ、「私です」と言われ、
「え、購買さん自ら評価されるんですか?」「そうなんですよ。ウチの会社、人使いが荒くて、立場上コストダウン提案をする立場なので頻繁に技術部門に提案していたら、評価方法教えるから今後、自分でやってくれと言われ、ワイパー、手袋、防塵着等、弊社オリジナルの評価方法ですが、私が測定しています・・」と聞いて驚きました。パーティクルカウンター(クリーンルーム用の発塵量測定機)を利用してクリーンルームの片隅で測定しているとおっしゃっていました。

ちなみにその後『評価測定させて頂きましたが、問題ないレベルというか、桜井さんのほうが発塵が少なかったので採用します』と無事ご成約頂き、10年以上前の事ですが、未だにはっきりと覚えています。
8.まとめ(桜井株式会社の営業ネットワーク)
8-1.お問い合わせ方法、打合せスタイル
長々とご説明して参りましたが、クリーンペーパー(スタクリン)についてご理解頂けたでしょうか?調子に乗ってあまりに語りすぎて次回からコラムのネタに困りそうです・・・。
当社(桜井株式会社)では下記の営業スタイルでお客様の御要望に沿った対応をさせていただいております。お気軽にご連絡ください。
8-2.クリーンペーパーへの思い、営業ネットワーク
『ウチは工業団地で都心部からかなり離れているけど、紙1枚のことでワザワザ来てくれるのですか?』と、たまにご心配いただきますが、昭和・平成・令和と時代は変わっても、『ユーザー様が望まれる限り、当社(桜井株式会社)が行かずに誰がクリーンペーパーの直接面談に伺うんだ!』くらいの使命感をもって対応させていただいています(現営業部門部員の方々、『この令和時代に昭和の化石がよけいな事を勝手に書くな!』という場合はお声がけ下さい。販売管理部(校閲担当部署)の了解は得ていますが、すぐに修正します…。)。
以上、最後までお読み頂き有難うござました。
執筆者紹介
高谷 陽介 (Takatani Yousuke)
1992年桜井株式会社に入社。社歴約30年のうち20年以上クリーンペーパーに携わり、現在マーケティンググループに所属。自ら『ミスタークリーンペーパー』とコラム内で表現し(実際には過去誰も呼んでいない)、社内外から冷やかしを受けるも、自分がいじられることで桜井ホームページに興味を持っていただけるならと覚悟を決めた様子。いつの日か『ミスタークリーンペーパーに相談があります』と指名の問合せ連絡が来る日を夢見て次回のコラム案を考える日々。
趣味はゴルフ、バイク、麻雀、ポケモンGo(散歩)とまさに生きた昭和の化石。