クリーンペーパーの別注(カスタマイズ)対応について
- 21h02m01
- 7月31日
- 読了時間: 11分
更新日:8月5日
~クリーンペーパーのA1サイズ、指定サイズ、印刷ってできるの?~

当社(桜井株式会社)では、クリーンルーム内で使用するクリーンペーパーを製品企画から在庫・販売まで行っており、販売を開始してから30年以上になります。
今までこのコーナー(クリーンペーパーサイト内コラム)では、クリーンペーパーに関する基本的なことを中心にお話ししてきましたが、今回は特殊なケースについてお話ししたいと思います。
既製品、規格品でない商品を皆様は何と呼びますか?
別注品、別製品、特注品、カスタマイズ対応、カスタム品、特別対応、個別対応、オーダー品など、業界や商品により呼び方はさまざまかと思います。今までクリーンペーパーに携わっている期間が比較的長かった私(筆者)は、『別注』という言葉を使うことが多いので、今回は『別注』という言葉を中心に使わせていただきます。

当社のホームページ、公式ECサイト(SAKURAI DirectShop)、カタログには掲載されていない『別注商品』を、過去の実績と当社ならではの経験と裏話も含めご紹介してまいります。今回は既にクリーンペーパー(無塵紙)をご存じということを前提で話を進めてまいりますので、『クリーンペーパー自体を検討するのが初めてだ』という方は下記関連ページをお読みになってからお進みください。
また、うんちくを聞いている時間はなく、『急ぎで探している製品がある』という場合は下記のお問い合わせフォームからご連絡ください。
<目次>
2-1. 原紙の別注生産
2-2. 加工による別注対応例
3-1. A1サイズ対応、指定サイズ断裁、抜き加工品
3-2. ロール加工品、小巻加工、スタクリンサーマル(感熱タイプ)
3-3. 印刷加工品、別注ノート(ノベルティ用途)
3-4. クリーンルーム用ラベル
4-1. 黒色のクリーンペーパー
4-2. クリーンペーパー『超』幅広ロール品
4-3. 超厚口タイプ(クリーンペーパーの厚紙、貼り合わせ加工)
1.別注品対応の判断目安は原紙(基材)の有無がポイント
まず、いきなり核心に触れていきますが、別注対応しやすい、しにくいのポイントは、クリーンペーパーの『原紙』があるかないかで決まってきます。下記3つのパターンでご説明していきます。
①『オレンジ色のクリーンペーパーのA2サイズがほしい』
②『いつも使っているクリーンペーパーを、500mm×600mmに加工できるか』
③『厚み400μmのクリーンペーパーはあるか』
上記例①~③の場合、当社(桜井株式会社)にて①と②は対応可能な原紙がありますが、③はありません。ということで①と②のケースの場合は、原紙からどのようにご希望の商品に仕上げていくか、当社営業員が検討してご提案していく流れとなります。
当社で一番実績のあるクリーンペーパー『スタクリン』シリーズの原紙例(名称/用途/色/米坪量/厚み)を下記表でご案内し、③のような原紙がないケースは、次の『2.原紙がない場合の対応』にてご説明します。

クリーンペーパーの原紙例(スタクリンシリーズ)
2.原紙がない場合の対応
対応できる“原紙がない”という場合の対応手段を大きく二つご説明します。
2-1. 原紙の別注生産
原紙があればそこからご希望にそって別注対応を検討していくとご説明しましたが、では原紙がないとそこで終わりなのか?というと、そうではございません。かなりの使用数量が見込まれ、継続性もあり、技術的・設備的にも生産可能な製品であれば、『ゼロ』から商品設計してご提案することが当社(桜井株式会社)はできます。ただし実現化するケースは正直に言うと、かなり『少ない』ということだけ最初にお伝えしておきます。
その理由は原紙の生産ロットにあります。製紙業界では、一つの原紙を生産するには最低でも10トンから20トンの数量が必要となるのが一般的です(小規模生産が得意な製紙メーカーは除く)。
例えば当社ブランドのスタクリンシリーズは7色の原紙がございますが、どの色にも該当しない『濃いグレー色でA4サイズのクリーンペーパーがほしい』というご要望があったとします。ざっくりではありますが、A4サイズで72g/㎡ベース(厚みで90μm程度)のA4サイズ品を250枚×10冊/ケースで商品化したとすると、1ケースの重さは約11.5キロとなります。この場合で原紙10トンから約869ケースが仕上がります(途中の生産ロス、加工ロス等は考えず机上の計算)。
こちらを一括でお引き取り、あるいは数カ月で消化可能となれば商品化に向けて要検討となりますが、大半の場合は『いやいや、10年かかっても使い切れません・・』となります。

成約するケースが『少ない』とは申しましたが、当社(桜井株式会社)のクリーンペーパーの発売当初は、原紙の種類はせいぜい2種類程度でしたが、現在では20種類以上になります。その時、その時の業界とユーザーニーズに応え続けてきた、ありがたい結果と感じております。
色・厚み・平滑性(ザラザラ感)、その他の特性が網羅できて、10~20トンの生産ロットも問題ないという場合は原紙の別注生産をご提案させていただきます。

2-2. 加工による別注対応例
さて、既製品でもない、在庫原紙からも対応できない、原紙を別注生産する数量にも至
らないという場合でも、もう一つ方法があります。
『1.別注品対応の判断目安は原紙(基材)の有無がポイント』で述べた、『原紙からご希望の製品へ仕上げていく』の応用編となりますが、原紙に後加工を加えることで対応できるケースがあります。
『2-1.原紙の別注生産』では数量が多すぎるとなった『濃いグレー色のクリーンペーパー』を例に説明すると、原紙としてはクリーンペーパーの代表色である通常のブルー色(あるいはホワイト色)をベースに『濃いグレー色』を印刷加工します。片面印刷でも、両面印刷でもご希望どおりに。コストとしては通常のA4サイズ品の3~5倍、ロットによってはそれ以上の価格となってしまう場合もありますが、生産ロットは2,000~5,000枚程度から可能となりますので、原紙を特注生産した場合の約869ケース分(約2,172,500枚)と比較すれば数量は比較にならないほど抑えられます。
厚みに関しても『貼り合わせ』という加工でご提案と供給が可能です。当社(桜井株式会社)で在庫しているクリーンペーパー原紙で一番厚い商品が『スタクリン/SC420NBMS』で、厚み約500μm(t=0.5mm)となります。『厚み1mm以上のクリーンペーパーが必要』となった場合、接着剤等を使った“貼り合わせ加工品”をご提案します。
クリーンペーパー(スタクリン)を原紙としたウエハー収納用BOX(円柱型のケース)や、クリーンペーパーやフィルムロール用のコア(紙管)といった加工製品もご提供しており、要は『切ったり、貼ったり、抜いたり、組み立てたり』と、『紙』でできそうな『加工商品』は、おおよそクリーンペーパーでも実現可能ということです。

3.別注品 よくあるパターン4選
それでは、お客様からのお問い合わせを受付して数十年のキャリアの私(筆者)から、お問い合わせの多いクリーンペーパーの『別注品』をご紹介していきます。
3-1.A1サイズ対応、指定サイズ断裁、抜き加工品
まずはA4やA3以外のサイズについてのお問い合わせです。
大型コピーをとられたり、図面をクリーンルームに持ち込まれるのか、特にA1サイズ(594mm×841mm)やA2サイズ(420mm×594mm)はお問い合わせをよくいただきます。A1サイズがとれる原紙は常に持っていますのでご要望にお応えできます。A1以下も全く問題なく、ご指定サイズにカット、ファイル綴じ用の『2穴』加工して供給してほしいなどの抜き加工もご相談に応じます。
3-2.ロール加工品、小巻加工、スタクリンサーマル(感熱タイプ)
続いてはロールタイプです。
スタクリンシリーズにて594mm幅の150メートル巻3インチコアは在庫しておりますが、幅800mmでほしい、200メートル巻きでほしい、などのご要望にお応えします。
通常のクリーンペーパーだけでなく、サーマル(感熱式)プリンター用のスタクリンサーマル(感熱紙)も4種サイズ(幅57mm、58mm、80mm、110mm)在庫しておりますが、別サイズも承ります。
3-3.印刷加工品、別注ノート(ノベルティ用途)
次は印刷対応です。
カラーレーザープリンター、インクジェットプリンターの普及で以前よりはご相談が減りましたが、数量が多いと自社(お客様自身)の出力では手間がかかり、特にカラー出力はトナー代やインク代が馬鹿にできず、印刷加工した方が安くなるケースもあります。クリーンペーパーのノートも各サイズご用意していますが、自社の生産工程記録を取りやすいようオリジナルの項目を印刷する、社名やロゴを入れて展示会等で粗品・ノベルティ用途で配布したい、というご相談もお受けします。
3-4.クリーンルーム用ラベル

よくある別注品相談の最後はラベル(シール)です。
昔から使われているラベルですが、デジタル化、DX化が進んだ今でもその認識や判別のしやすさから、クリーンルーム業界問わず多く利用されています。クリーンペーパーは大手通販でも手に入るけど、ラベルはなかなか販売していない、ということでご相談を多くいただきます。
4.稀なケース3選
ここからは私(筆者)の趣味の域とも言える、過去のレアケースをご紹介していきます。
なお、私も30年以上クリーンペーパーに携わっているので、試作しただけで販売には至らなかったのか?現在も使用されているのか?といったあたりはかなり記憶があやふやですのでご了承ください。誓って嘘は申しません。
4-1.黒色のクリーンペーパー

別ページの『課題解決事例』にもありますが、私が営業員時代に『黒いクリーンペーパーがほしい』という相談を、既にクリーンペーパーをお使いのお客様から受けました。
なんでもその『黒いクリーンペーパー』の上に光学製品を並べて、光の反射を抑えながら目視検品を行いたいとのことでした。
『ご自分で黒ベタコピーではダメでしょうか?』と聞いたところ、当時(平成前期頃)のコピー機はあまり性能がよくなく、ベタの色も薄く、インクトナー(粉)の脱落も気になるということで、ハンドリング(操作性)も考慮して厚みのあるクリーンペーパーに“真っ黒なベタ印刷”をして納品し、仕上がりには非常に満足いただけました。
光学製品を乗せるだけなのでさほど消耗せず、納品数は少なかったと思いますが、その後当社の営業担当も変わり、はたしてリピートはあったのだろうかと、ふと思い出す時があります。
4-2.クリーンペーパー『超』幅広ロール品

続いては年に1回ほどご相談がある幅の広いクリーンペーパーロール紙です。
光学フィルム、コーティングフィルム、あるいは光学樹脂板を包んだり、スペーサー(合紙)としてお使いになるのでしょうか、『幅1,000mm以上ありますか』、『1,100mmのロール対応はどうでしょうか?』というご相談を受けることがあり、今までの実績品は最大1,200mm幅です。クリーンペーパーの原紙自体は約2,500mm幅で生産しているので1,200mm幅以上も不可能ではないのですが、『どうやって運ぶんだ』、『何処でカットするんだ』という課題がつきまとい、価格や生産ロットの問題で机上の計算(概算提示)で終わることが多いです。
4-3.超厚口タイプ(クリーンペーパーの厚紙、貼り合わせ加工)
上でもご説明したとおり、当社(桜井株式会社)の在庫しているクリーンペーパーで一番厚いものは厚さ約500μm(t=0.5mm)です。過去にお客様から『厚さ1.5mm以上のクリーンペーパーが必要で、その基材を自社で抜き加工してみたい。』というご依頼を受け、接着剤で500μm品を3枚貼り合わせしテストしていただきましたが、『紙だからいけると思ったけど、弊社(ユーザー様側)の設備では抜けませんでした・・』と私(筆者)のケースでは失敗に終わりました。しかし、『厚みに加え静電対策もほしい』というお客様に、厚み500μm基材+ASスタクリン(導電性能10⁶Ω以下、厚み約90μm)を貼り合わせたものは、納入の実績があります。
5.まとめ、クリーンペーパーへの思い(桜井株式会社の営業ネットワーク)
ちょっとだけお話しするつもりがついつい長くなってしまいましたが、いかがだったでしょうか?皆様からのお問い合わせとアイデアを、今後も当社は商品化に向けて真摯に検討、提案させていただきます。皆様からのご質問とご連絡をお待ちしています。
桜井株式会社では、お客様のご要望に沿った対応をさせていただいております。
『ウチは工業団地で都心部から離れているけど、紙1枚のことでわざわざ来てくれるのですか?』とたまにご心配いただきますが、昭和・平成・令和と時代が変わっても『当社(桜井株式会社)が行かずに、誰がクリーンペーパーの直接面談に伺うんだ!』くらいの使命感を持って対応させていただきます。

以上、最後までお読みいただきありがとうございました。
執筆者紹介
高谷 陽介 (Takatani Yousuke)
1992年桜井株式会社に入社。社歴約30年のうち20年以上クリーンペーパーに携わり、現在マーケティンググループに所属。自ら『ミスタークリーンペーパー』とコラム内で表現し(実際には過去誰も呼んでいない)、いつの日か『ミスタークリーンペーパーに相談があります』と指名の問い合わせ連絡が来る日を夢見ている。
近年国内の6~9月の暑さが尋常じゃなく、本気でどうにかしませんか!と誰かに訴えたい今日この頃。趣味の一つであるポケモンGOで好きなポケモンはカビゴンとワンリキー。












































